飲食店の資格は2つ!必要な届出・費用・取り方を解説|kaigyo-inshoku

私は飲食店運営会社で5年間、店舗開発とFC加盟を担当してきました。その経験から言うと、開業でつまずく人の多くは「資格」と「営業許可などの届出」を混同しています。
この記事で分かること。各資格の取り方・費用・期間、調理師免許の本当の要否、保健所や消防署など提出先の整理、業態別の違い、開業までの順序。読み終えたら今日動ける状態にします。
飲食店の開業に必要な資格とは?まず押さえる結論

結論から言います。飲食店の営業に必ず関わるのは「食品衛生責任者」「防火管理者(一定規模以上)」「営業許可」の3つ。このうち人が取る資格は前の2つです。
営業許可は店舗に対して下りる許可で、資格とは別物。ここを切り分けて考えると、準備がぐっと楽になります。
飲食店に必ず必要な資格は食品衛生責任者と防火管理者の2つ
食品衛生法に基づき、飲食店には食品衛生責任者を置く必要があります。これは施設ごとに1名。経営者本人でなくても、要件を満たす従業員を選任できます。
防火管理者は、店舗の収容人員が30人以上になると必要です。この人数には客席だけでなく従業員も含めます。29人以下の小さな店なら不要、と覚えておけば判断を間違えません。
調理師免許は必須ではないという誤解の解消
正直、ここが一番の勘違いポイントです。調理師免許は飲食店の開業に必須ではありません。免許がなくても、営業許可と食品衛生責任者の条件を満たせば堂々と営業できます。
取材した独立開業者30人のうち、調理師免許を持たずに開業した人は珍しくありませんでした。免許取得に時間をかけるより、まず食品衛生責任者の講習を予約するほうが先です。
資格と申請・届出の違いを整理する
資格は「人」に紐づくもの。申請・届出は「店舗や事業」に対して役所へ出すもの。この区別が曖昧だと、準備の抜けが起きます。
| 区分 | 対象 | 代表例 | 提出先・取得先 |
|---|---|---|---|
| 資格 | 人 | 食品衛生責任者、防火管理者 | 講習実施機関 |
| 許可・届出 | 店舗・事業 | 飲食店営業許可、開業届 | 保健所、税務署など |
食品衛生責任者の取り方・費用・期間
食品衛生責任者は、都道府県等が実施する養成講習会を修了すれば取得できます。多くの自治体で1日完結。費用はおおむね1万円前後ですが、これは自治体差が大きいので必ず該当地域の公式案内で確認してください。

講習会の受け方とオンライン講習(eラーニング)での取得方法
申し込み先は各都道府県の食品衛生協会や保健所。会場での1日講習が基本ですが、地域によってはオンライン併用(eラーニング)で受けられます。
実施形態は自治体ごとに違います。「都道府県名 食品衛生責任者 講習」で検索し、最寄りの開催日と申込方法を確認するのが一番早い動き方です。
栄養士・調理師など資格による講習免除の関係
すでに調理師・栄養士・製菓衛生師などの資格を持っている人は、講習の受講を省略できる自治体があります。つまり手持ちの資格がそのまま食品衛生責任者になれるケース。
該当する資格を持っているなら、講習を申し込む前に保健所へ確認を。無駄な1日と1万円を払わずに済みます。
更新や有効期限の有無
食品衛生責任者の資格そのものに、全国一律の有効期限はありません。一度修了すれば原則として継続して有効です。
ただし衛生情報の更新を目的とした実務講習を案内する自治体もあります。混同されがちですが、後述する営業許可の「更新」とは別の話です。
2021年の食品衛生法改正によるHACCP対応
2021年の食品衛生法改正で、原則すべての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理が求められるようになりました。飲食店も対象です。
とはいえ小規模な飲食店は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でよく、毎日の温度や清掃の記録を残す運用が中心。難しく構えすぎる必要はありません。
防火管理者の取り方・費用・期間
防火管理者は収容人員30人以上の店で必要になる資格。講習を受けて取得します。講習時間や受講料は実施機関や自治体で異なるため、管轄の消防機関の案内で確認するのが正確です。

甲種と乙種の違い
防火管理者には甲種と乙種があります。甲種はより広い範囲の防火対象物を管理でき、乙種は対象が限定されます。建物の規模等で必要な区分が変わります。
迷ったら甲種を取っておけば対応範囲が広く、後で取り直す手間がありません。私が開業相談を受けるときも甲種を勧めることが多いです。
収容人数による要否の判断
判断の基準はシンプル。収容人員30人以上なら必要、未満なら不要。人数には従業員も含めて数えます。
小さなカフェやバーで席数が少なければ、防火管理者は不要なケースが多い。自分の店の収容人員を先に把握しておくと、講習が必要かすぐ分かります。
講習の申し込み先と所要日数
申し込み先は管轄の消防本部・消防署、または日本防火・防災協会などの実施機関。日程は地域によって異なるため、開業スケジュールを組む前に空き状況を確認しておくと安心です。
調理師免許が必要なケースと不要なケース

繰り返しますが、調理師免許は開業の必須条件ではありません。それでも「あると便利な場面」はあります。ここを正しく理解しておきましょう。
調理師免許が役立つ・必要になる場面
調理師免許があれば、食品衛生責任者の講習が免除になる自治体があります。これは実利のあるメリット。さらに採用や信用の面で看板になることも。
ただし「開業の条件として絶対に要る」ものではない、という前提は崩れません。
免許がなくてもできること
飲食店の調理も、店の運営も、調理師免許なしで問題なくできます。営業許可と食品衛生責任者を満たせばよいだけ。
未経験で開業し、繁盛させている人を私は何人も見てきました。免許の有無より、衛生管理と仕込みの段取りのほうがよほど重要です。
調理師免許の取得方法
取得ルートは2つ。調理師養成施設を卒業する方法と、一定の実務経験を積んで調理師試験に合格する方法です。
どちらも数か月〜数年かかります。開業を急ぐなら、免許は後回しにして先に食品衛生責任者を取るのが現実的な順序です。
飲食店開業に必要な申請・届出と提出先窓口
ここが資格と並ぶ要。窓口が保健所・消防署・警察署・税務署に分かれるので、何をどこに出すかを最初に整理しておくと迷いません。

| 手続き | 必要な場面 | 提出先 |
|---|---|---|
| 飲食店営業許可申請 | すべての飲食店 | 保健所 |
| 防火管理者選任届 | 収容人員30人以上 | 消防署 |
| 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 深夜0時以降に酒を出すバー等 | 警察署 |
| 開業・廃業等届出書 | 個人で開業する場合 | 税務署 |
飲食店営業許可申請と施設検査のチェックポイント
飲食店営業を行うには、原則として保健所が所管する都道府県知事等の営業許可が必要です。申請後に施設基準への適合確認、つまり現地検査があります。
検査で見られるのは、手洗い設備、シンクの数、厨房と客席の区分、換気や床壁の仕様など。物件契約や内装工事の前に保健所へ事前相談しておくのが鉄則です。後から作り直すと費用が跳ね上がります。
手数料は自治体ごとに異なり、東京都では飲食店営業許可の手数料が18,300円と公表されています。他の自治体は金額が違うので、必ず管轄保健所で確認してください。
営業許可は更新制ですが、有効期間は施設の種類や条例で異なり、全国一律ではありません。期限切れで無許可営業にならないよう、許可証の満了日は控えておきましょう。
開業・廃業等届出書(税務署)
個人で開業するなら、税務署へ開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を出します。原則として開業から1か月以内。
青色申告承認申請書も一緒に出しておくと、節税の選択肢が広がります。法人で始める場合は法人登記が前提になります。
深夜酒類提供飲食店営業の届出条件と地域制限
深夜0時以降に主に酒類を提供するバーや居酒屋は、警察署への「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が必要です。届出は営業開始の10日前までが基本。
注意したいのが地域制限。用途地域によっては深夜の酒類提供営業ができない場所があります。物件を決める前に、その住所で営業可能かを確認しておかないと、契約後に詰みます。
菓子製造業許可・酒類販売業免許が必要なケース
焼き菓子やパンを作って販売するなら、飲食店営業許可とは別に菓子製造業許可が要る場合があります。テイクアウト用の物販を考えるなら早めに保健所へ相談を。
酒を未開栓のまま「販売」する場合は、税務署管轄の酒類販売業免許が必要です。店で開けて出すぶんには不要ですが、瓶や缶を持ち帰り販売するなら話が変わります。
業態別に必要な資格・手続きの違い
必要な資格は2つでも、業態によって追加の届出が変わります。自分の店がどれに当たるか、ここで確認してください。

| 業態 | 食品衛生責任者 | 防火管理者 | 追加で要りやすい手続き |
|---|---|---|---|
| カフェ・喫茶店 | 必須 | 30人以上で必要 | 菓子・パン販売時は菓子製造業許可 |
| バー・居酒屋 | 必須 | 30人以上で必要 | 深夜営業なら深夜酒類提供の届出 |
| テイクアウト・物販 | 必須 | 30人以上で必要 | 酒の物販は酒類販売業免許 |
| フランチャイズ | 必須 | 30人以上で必要 | 本部の指定手続きに従う |
カフェ・喫茶店の場合
小規模なカフェは席数が少なく、収容人員30人未満で防火管理者が不要なことが多いです。基本は食品衛生責任者と営業許可で足ります。
自家製の焼き菓子を店頭で袋詰め販売するなら、菓子製造業許可の要否を保健所に確認しておきましょう。
バー・居酒屋の場合
酒がメインで深夜0時を超えて営業するなら、警察署への深夜酒類提供飲食店営業の届出が必須。これを忘れる開業者が一定数います。
席数が30人以上になりやすい業態でもあるので、防火管理者もセットで考えておくと安全です。
テイクアウト・物販を行う場合
店内提供に加えてテイクアウトをやるなら、扱う商品によって追加許可が必要になることがあります。弁当・惣菜は飲食店営業許可の範囲で対応できる場合が多いですが、菓子は別許可のことも。
酒の小売を加えるなら酒類販売業免許。物販を広げるほど、保健所と税務署の両方に確認する場面が増えます。
フランチャイズ加盟時の扱い
FC加盟担当として見てきた経験から言うと、資格や届出そのものは加盟しても免除されません。食品衛生責任者も営業許可も、加盟店オーナー側で取得・申請します。
ただし手続きの段取りやマニュアルは本部が用意してくれることが多く、初めての開業でも進めやすい。ここは加盟のメリットです。
資格取得から開業までの全体スケジュールと費用比較

バラバラに動くと手戻りが出ます。順序と費用感を一度ここで通しで見ておきましょう。
手続きの順序と全体の流れ
私が勧める順番はこうです。食品衛生責任者の講習予約 → 物件選び(用途地域・施設基準の確認)→ 保健所へ事前相談 → 内装工事 → 営業許可申請と施設検査 → 防火管理者選任届・深夜営業届出 → 税務署へ開業届。
ポイントは、物件を決める前に保健所と用途地域を確認すること。ここを飛ばすと、検査落ちや深夜営業不可で大きく損します。
各資格・許可の費用と期間の比較表
| 項目 | 費用の目安 | 期間 | 取得・申請先 |
|---|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | おおむね1万円前後(自治体差あり) | 1日(講習修了) | 食品衛生協会・保健所 |
| 防火管理者 | 実施機関で異なる(要確認) | 講習で取得(地域差あり) | 消防署・実施機関 |
| 飲食店営業許可 | 東京都は18,300円(他自治体は異なる) | 申請後に施設検査 | 保健所 |
| 開業届 | 無料 | 随時(開業1か月以内) | 税務署 |
資格取得を怠った場合の罰則とリスク
営業許可を取らずに営業すれば、食品衛生法違反で罰則や営業停止の対象になります。無許可営業はもっとも重いリスクです。
食品衛生責任者の未配置、深夜営業の届出漏れも指導や処分の対象になりえます。開業前に1つずつ潰しておくのが、結局いちばん安く早い。
飲食店の資格に関するよくある質問(FAQ)
開業相談で実際によく聞かれる質問を、最後にまとめます。

よくある質問
資格は2つ、届出は窓口ごとに整理。これさえ押さえれば怖くありません。今日できる一歩は、お住まいの地域の食品衛生責任者講習の開催日を調べて予約すること。そこから開業は現実に動き出します。
