飲食店資格を完全ガイド|開業に必要な資格・届出と取得方法

調理師免許は要りません。これは多くの人が誤解しているところで、無くても飲食店は開けます。
この記事では、各資格の取り方・費用・期間、保健所や消防署への届出、業態別の違い、開業までの順序までまとめました。私は飲食業界に10年いて、店舗開発やFC加盟も担当してきました。開業者への取材も30件を超えます。その経験をもとに、つまずきやすい所も正直に書きます。
飲食店資格とは?開業に最低限必要なものを最初に結論

飲食店資格と呼ばれるものは、実は数が多くありません。一般に必要とされるのは「食品衛生責任者」と「防火管理者」の2つです。
前者は各施設に原則1人の配置が必要。後者は一定規模以上の施設で選任が求められます。ここを押さえれば、資格まわりの全体像はほぼ見えます。
飲食店の開業に必ず必要な資格は食品衛生責任者
これは全店共通で必須です。カフェだろうとバーだろうと、店舗ごとに1人置く必要があります。
該当するのは、調理師・栄養士・製菓衛生師・食鳥処理衛生管理者などの資格保有者、または都道府県等が実施する養成講習会の修了者です。つまり何の資格も持っていない人でも、講習を1日受ければクリアできます。
収容人数によって必要になる防火管理者
防火管理者は全店に必要なわけではありません。消防庁の制度上、収容人員が30人以上の防火対象物で選任が求められます。
逆に言えば、収容人数30人未満の小規模店なら不要なケースがあります。ただし最終判断は管轄の消防署に確認してください。建物全体の用途で見られることもあり、自分の客席数だけでは決められない場合があるからです。
調理師免許は開業に必須ではない理由

ここは一番質問が多い所です。結論、調理師免許がなくても飲食店営業はできます。
飲食店の営業に必要なのは「飲食店営業許可」という行政の許可であって、調理する人の個人資格ではありません。施設が基準を満たし、食品衛生責任者が置かれていれば営業できる仕組みです。だから免許を持たないオーナーが厨房に立つ店も普通にあります。
飲食店開業に必要な資格の取得方法・費用・期間
必要な資格が分かっても、実際どこで・いくらで・どれくらいかかるかが気になりますよね。ここを具体的に整理します。
先に要点だけ言うと、食品衛生責任者は原則1日の講習で取れます。防火管理者は甲種2日・乙種1日が目安です。
食品衛生責任者の取り方と講習免除の条件
取得ルートは2つです。すでに調理師・栄養士・製菓衛生師・食鳥処理衛生管理者などの資格を持っていれば、講習は免除され、その資格で食品衛生責任者になれます。
持っていなければ、都道府県等の養成講習会を受けます。原則1日で修了する形式が中心で、自治体によってはeラーニングを用意している例もあります。費用は自治体差がありますが、民間の解説ではおおむね1万円前後です。受講する都道府県・政令市の案内で必ず再確認してください。
防火管理者(甲種・乙種)の違いと取得方法

防火管理者には甲種と乙種があり、建物の規模や用途で必要な種別が変わります。大きい建物ほど甲種が求められると考えてください。
講習は甲種が2日、乙種が1日という案内があります。受講料は甲種6,500円、乙種5,500円という例が示されていますが、これは実施機関や地域で異なるため、受講先で確認が必要です。
資格ごとの費用と取得期間の比較一覧
数字を並べて比べたほうが早いので、表にしました。金額は自治体・実施機関で変わるため、目安として見てください。

| 項目 | 区分 | 費用の目安 | 所要期間の目安 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 食品衛生責任者講習 | 資格 | おおむね1万円前後 | 原則1日 | 民間解説 |
| 防火管理者講習(甲種) | 資格 | 6,500円の例 | 2日 | 民間解説 |
| 防火管理者講習(乙種) | 資格 | 5,500円の例 | 1日 | 民間解説 |
| 飲食店営業許可(東京都) | 許可 | 18,300円の例 | 施設検査を含み数週間 | 民間解説 |
正直に言うと、資格そのものより営業許可の手続きのほうが時間を食います。講習は1〜2日で終わっても、保健所の施設検査は予約と段取りが要るからです。
飲食店開業に必要な申請・届出と提出先
資格と並んで多いのが「どこに何を出すんだ問題」です。提出先は大きく4つ、保健所・警察署・消防署・税務署に分かれます。
代表例は、飲食店営業許可、防火管理者の選任届、税務署への開業届。業態によってはここに警察署への届出が加わります。
飲食店営業許可申請(保健所)と有効期限・更新

これが届出の筆頭です。資格ではなく営業許可で、保健所への申請と施設基準の確認を経て取得します。
手数料は自治体ごとに異なり、東京都の飲食店営業許可は18,300円という例があります。最新額は申請先で確認してください。許可には有効期限があり、期限が来たら更新申請が必要です。期限切れで営業を続けないよう、許可証の年月は必ず控えておきましょう。
深夜酒類提供飲食店営業の届出(警察署)
深夜0時を過ぎてお酒を主に提供する店は、別途「深夜酒類提供飲食店営業」の届出が要ります。提出先は警察署です。

バーや深夜営業の居酒屋が該当しやすい一方、カフェやラーメン店のように酒類が主目的でない深夜営業は扱いが変わります。自分の店がどちらかは、管轄の警察署生活安全課に確認するのが確実です。
防火対象物使用開始届など消防署への届出
消防署関連は見落としやすい届出が多い場所です。防火管理者を選任したら、その選任届を消防署へ出します。
このほか、建物を新しく使い始めるときの防火対象物使用開始届、内装工事を伴う場合の工事等計画届出書など、消防への提出物がいくつか発生することがあります。物件や工事の有無で要否が変わるため、内装業者と消防署に早めに相談しておくと手戻りが減ります。
開業・廃業等届出書など税務署への届出
営業を始めたら、税務署に開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を出します。これは資格でも許可でもなく、税務上の届出です。
開業届とあわせて、青色申告の承認申請書を出しておくと節税面で有利になります。私が取材した開業者の多くが、ここを後回しにして申告期に慌てていました。営業許可が下りたタイミングで一緒に済ませるのがおすすめです。
業態別に見る必要な資格・届出の違い
必要な手続きは業態でけっこう変わります。食品衛生責任者と営業許可は共通の土台ですが、その上に乗るものが違う。
自分の店に当てはまるところだけ拾ってください。
カフェ・テイクアウト・菓子製造の場合
ケーキやパン、焼き菓子を作って売るなら、飲食店営業許可とは別に菓子製造業許可が必要になるケースがあります。店内で提供するか、製造して販売するかで区分が分かれるからです。

カフェでドリンクと軽食を出すだけなら飲食店営業許可で足りることが多い一方、焼き菓子の物販を始めた途端に菓子製造業許可の話が出てきます。メニューを決める段階で保健所に相談すると、許可の取り直しを避けられます。
バー・居酒屋など酒類提供の場合
酒類を提供すること自体は、飲食店営業許可の範囲でできます。問題になるのは深夜帯です。
深夜0時を超えてお酒を主に出すなら、前述の深夜酒類提供飲食店営業の届出が警察署に必要です。さらに、酒屋のように未開栓の酒を販売する場合は酒類販売業免許という別の話になります。店で飲ませるのか、瓶のまま売るのかで必要なものが変わる、と覚えておくと混乱しません。
キッチンカー(移動販売)の場合
キッチンカーも食品衛生責任者は必須です。これは固定店と同じ。
違うのは営業許可で、車両を対象にした飲食店営業許可が必要になり、車内設備に給排水タンクなどの基準があります。さらに営業する場所の自治体ごとに許可の考え方が分かれることがあり、複数エリアを回るなら確認の手間が増えます。出店先が決まったら、その地域の保健所に早めに当たるのが鉄則です。
開業までの全体スケジュールと手続きの順序
順番を間違えると開業が遅れます。一番多い失敗が、内装を作り込んでから保健所基準に合わず作り直すパターンです。
資格取得・物件・工事・申請の流れを、時系列で整理します。
資格取得から営業開始までのタイムライン
大きな流れは次のとおりです。資格と申請の前後関係を間違えなければ、スケジュールは組みやすくなります。

| 順序 | やること | 提出先・場所 |
|---|---|---|
| 1 | 食品衛生責任者の講習を受ける | 都道府県等の養成講習会 |
| 2 | 物件契約・内装プランを保健所基準に合わせる | 保健所へ事前相談 |
| 3 | 防火管理者講習(収容30人以上の場合) | 消防機関の講習 |
| 4 | 飲食店営業許可を申請し施設検査を受ける | 保健所 |
| 5 | 防火管理者選任届・消防の各届出 | 消防署 |
| 6 | 深夜酒類提供の届出(該当する場合) | 警察署 |
| 7 | 開業届・青色申告承認申請 | 税務署 |
ポイントは、内装を着工する前に保健所へ相談すること。これだけで作り直しのリスクが大きく下がります。
個人事業主と法人で異なる届出
資格と営業許可は個人でも法人でも同じです。違うのは税務・登記まわり。
個人事業主は税務署へ開業届を出すだけでスタートできます。法人の場合は設立登記が前提になり、営業許可の名義も法人になります。許可の申請者名を個人か法人かで取り違えると、後から名義変更の手間が出るので、開業形態は申請前に決めておきましょう。
フランチャイズ加盟時の資格・手続きの扱い
FC加盟担当をしていた立場から言うと、資格と許可は加盟者本人の責任で取るのが基本です。看板が本部のものでも、食品衛生責任者や営業許可は各店舗ごとに必要になります。
本部が申請を代行・サポートしてくれる場合もありますが、講習の受講そのものは本人が行います。「本部がやってくれると思っていた」という認識のズレが、開業直前のトラブルになりがちです。加盟契約の時点で、どこまでを本部が、どこからを自分がやるのか線引きを確認してください。
HACCPと衛生管理の義務化対応
資格や届出とは別に、すべての食品事業者に衛生管理の仕組みが求められています。HACCPに沿った衛生管理です。

難しそうな名前ですが、小規模な飲食店向けには簡略化された対応が用意されています。
HACCPに沿った衛生管理とは
HACCPは、調理や保管の工程ごとに危険を見つけて管理し、それを記録する考え方です。温度管理や手洗いといった日々の作業を、ルール化して残しておくイメージです。
新しく特別な資格を取る話ではありません。食品衛生責任者を中心に、店の衛生ルールを文書として整え、実施を記録していく取り組みです。
小規模な飲食店に求められる対応
個人経営の小さな店まで、大企業と同じ厳密な管理を求められるわけではありません。小規模事業者は、業界団体が用意する手引書に沿った簡略な方法で対応できます。
具体的には、手引書のチェックリストに沿って毎日の衛生確認を記録する程度から始められます。保健所の立入時に記録を見られることがあるので、開業初日から続けられる無理のない様式にしておくと安心です。
【独自】よくある失敗例と開業時に使える支援制度
ここは取材で集めた、現場でしか出てこない話を中心に書きます。教科書には載らないつまずきと、お金の話です。
知っていれば避けられた失敗が、本当に多いんです。
資格・届出でつまずいた現場の失敗例
取材で聞いた中で印象的だったのは、内装をほぼ完成させてから保健所の事前相談に行き、手洗い設備の位置が基準に合わず工事をやり直したケースです。数十万円と数週間が飛びました。

もう一つは、深夜酒類提供の届出を知らずにバーを開け、後から指摘されて慌てた例。届出は営業開始前が原則です。「資格は取ったのに届出を1つ忘れた」というパターンが一番多い、と私は感じています。
調理師免許をあえて取るメリット・デメリット
必須でないのは前述のとおりです。では取る意味がゼロかというと、そうでもありません。正直、ここは人によって判断が割れます。
メリットは、調理師資格があれば食品衛生責任者の講習が免除になること。料理の信頼性を打ち出せる点もあります。デメリットは、取得に実務経験や試験、あるいは養成施設での学習という大きな時間コストがかかること。
私の本音を言えば、すでに別ルートで実務経験がある人を除き、開業のためだけに今から調理師免許を取りに行くのは勧めません。食品衛生責任者の講習1日で開業要件は満たせるからです。時間を内装やメニュー開発に回したほうが、店の成果につながります。
補助金・助成金など活用できる支援制度
開業時に使える支援制度は国・自治体ともにあります。設備投資や創業を後押しする補助金・助成金が代表例です。
ただし制度は年度ごとに内容や募集時期が変わり、ここで具体的な金額を断言はできません。確かなのは、申請には事業計画書が要り、締切が決まっていること。物件契約より前に、地元の商工会議所や自治体の創業支援窓口へ一度相談しておくと、使える制度を取りこぼしません。
飲食店資格についてよくある質問(FAQ)
最後に、検索でよく一緒に調べられる質問へ短く答えます。
よくある質問
資格は1日の講習で取れます。むしろ大変なのは届出の抜け漏れと順番です。今日できる一歩は、住んでいる自治体の食品衛生責任者講習の日程を調べること。ここから動き出せば、開業は一気に現実になります。
