飲食店開業に必要な資格とは?費用・取得方法・手続きを徹底解説

調理師免許は不要。これは法律上はっきりしています。あとは保健所への営業許可をはじめとした「申請・届出」が、業態ごとに変わってくるだけです。
この記事では、必須資格の取り方・費用・期間、業種別の違い、どの窓口に何を出すか、開業何ヶ月前に動けばいいかまで、私が取材と現場で見てきた範囲で具体的に整理します。読み終わるころには、自分の店に必要なものが洗い出せるはずです。
飲食店開業に必要な資格と手続きの全体像

まず全体像。資格は「人」に紐づくもの、申請・届出は「店・営業」に紐づくものと考えると整理しやすい。
必須資格は2つだけですが、申請や届出は業態によって増えます。ここを混同すると「資格は取ったのに営業許可を忘れていた」という事故が起きます。実際、開業相談の取材でいちばん多かったミスがこれでした。
飲食店開業に必須の資格は2つだけ
飲食店営業の施設には、原則1名の食品衛生責任者を置く必要があります。これは厚生労働省・各自治体の食品衛生責任者制度で定められたものです。
もう1つが防火管理者。消防法上、一定規模以上の飲食店で選任が必要になります。一般に収容人員30人以上が目安です。
逆に言うと、小さなカフェで収容人数が少なければ防火管理者が要らないケースもある。だから「2つ必須」と覚えつつ、自分の店の規模で防火管理者の要否を必ず確認してほしい。
資格と申請・届出はどう違うのか
資格は講習を受けて「人」が取得するもの。申請・届出は「この場所でこの営業をします」と役所に出す手続きです。
たとえば食品衛生責任者の資格を持っていても、保健所の飲食店営業許可がなければ営業できません。資格=免許証、許可=店の通行手形、くらいの感覚です。
| 区分 | 内容 | 出す相手 |
|---|---|---|
| 資格 | 食品衛生責任者・防火管理者 | 講習実施団体で取得 |
| 許可 | 飲食店営業許可・菓子製造業許可 | 保健所 |
| 届出 | 防火対象物使用開始届・深夜酒類提供・開業届 | 消防署・警察署・税務署 |
開業何ヶ月前に何をするかのスケジュール
順番を間違えると開業が後ろにずれます。特に保健所の営業許可は施設の検査が入るので、内装工事の完了とセットで逆算するのがコツ。
私が取材した独立開業者の多くは、物件契約の前後で食品衛生責任者講習を申し込んでいました。講習は枠が埋まることがあるので、早めの予約が安全です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 3〜2ヶ月前 | 食品衛生責任者・防火管理者の講習を予約・受講 |
| 2〜1ヶ月前 | 内装工事、保健所へ事前相談・営業許可申請 |
| 開業前 | 保健所の施設検査、消防への届出、深夜営業なら警察署へ届出 |
| 開業後すぐ | 税務署へ開業届を提出 |
必ず取得する資格:食品衛生責任者と防火管理者
この2つは講習を受ければ取れます。試験対策が必要な国家資格とは違い、ハードルは高くありません。

ただし費用・期間・申し込み先が混乱しやすいので、ここを具体的に押さえておきます。
食品衛生責任者の取得方法・期間・費用
基本は各都道府県等が実施する養成講習会を1日受講するだけ。受講料は実施主体で差がありますが、一般的に1万円前後で案内されています。
栄養士・調理師・製菓衛生師など一定の国家資格を持つ人は、講習が免除される場合があります。すでに調理師免許があるなら、まず免除対象か確認するといい。正確な金額と免除条件は、住む自治体の最新案内で確認してください。
防火管理者の甲種・乙種の判断基準と費用
防火管理者には甲種と乙種があり、店舗の規模(延べ面積など)で必要な区分が変わります。講習日数は甲種が通常2日程度、乙種が1日程度。
収容人員30人未満の小規模店なら、そもそも防火管理者の選任自体が不要になることもあります。受講料は実施する消防本部などで異なるので、管轄の消防署に直接聞くのが早いです。
食品衛生責任者と食品衛生管理者の違い
名前が一字違いでまぎらわしいが、まったく別物です。飲食店開業に必要なのは食品衛生責任者のほう。
食品衛生管理者は、乳製品や食肉製品など特定の食品を製造・加工する施設に必要な、より専門的な資格です。一般的な飲食店やカフェの開業では不要。ここを取り違える相談を実際に何度も受けました。
オンライン・eラーニングでの取得方法
食品衛生責任者の養成講習は、自治体や協会によってはeラーニング(オンライン受講)に対応しています。
会場に行く時間が取れない人には便利ですが、対応の有無は地域差が大きい。受けたい自治体・協会の案内で「eラーニング対応か」を必ず確認してください。対応していない地域では会場受講になります。
調理師免許は飲食店開業に必要か
はっきり言います。調理師免許は飲食店の開業に必須ではありません。これは調理師法・調理師制度で確認できます。

「シェフなのに免許が要らないの?」と驚かれますが、本当に不要です。ではどんなときに役立つのかを整理します。
調理師免許が必要なケース・不要なケース
開業そのものに必要なケースはありません。一方で、食品衛生責任者の講習免除を受けたいとき、求人で調理師を募集するとき、対外的な信頼性を高めたいときには持っていると有利です。
私の感覚では、すでに調理経験が長い人ほど「免除のために取っておくと得」という使い方になります。
調理師免許がなくてもできること
料理を作り、客に提供し、店の責任者になる。これら全部、調理師免許なしでできます。
必要なのは食品衛生責任者と営業許可。だから「料理の腕はあるけど免許がない」という理由で開業を諦める必要はまったくありません。
調理師免許の取得方法
取得ルートは大きく2つ。調理師学校を卒業する方法と、2年以上の実務経験を積んで調理師試験に合格する方法です。
飲食店で働きながら実務経験を積み、試験で取る人が多い。開業を急ぐなら、無理に取得を待つより先に食品衛生責任者を押さえるべきです。
業種別に異なる資格・許可の違い

競合記事が薄いのがここ。同じ「飲食店」でも、カフェ・バー・菓子製造で必要な許可は変わります。
自分の業態を間違えると、許可の取り直しで開業が遅れる。実例を交えて整理します。
カフェ・喫茶店の場合
店内で調理した飲食物を提供するカフェは、飲食店営業許可が必要です。食品衛生責任者も当然必要。
注意したいのは、ケーキやクッキーを「店内で出す」のか「焼いて持ち帰り用に売る」のかで話が変わる点。後者は菓子製造業許可が絡みます。詳しくは菓子製造の項で。
バー・居酒屋など酒類を出す場合
店内でお酒を出して飲んでもらうだけなら、飲食店営業許可の範囲内で対応できます。酒類販売業免許は不要です。
ただし深夜0時を超えて主に酒を提供する形態だと、警察署への深夜酒類提供飲食店営業の届出が必要になります。バー開業ではここを見落としやすい。
菓子製造・テイクアウトの場合
パンや焼き菓子を製造して販売するなら、飲食店営業許可とは別に菓子製造業許可が必要です。これも保健所への申請。
「カフェで出すケーキ」と「箱詰めして売るケーキ」では許可区分が違う、と覚えておくと安全。テイクアウト主体の店を考えているなら、保健所に早めに相談してください。
酒類販売業免許との違い
店で飲ませる=飲食店営業許可。お酒をボトルや缶で「販売」する=酒類販売業免許。この区分が混同のもとです。
たとえばクラフトビールを店内で飲んでもらうだけなら酒類販売業免許は不要。でも未開栓のボトルを持ち帰り販売したいなら別途免許が要ります。やりたいことを先に決めてから確認しましょう。
開業に必要な申請と届出の窓口別まとめ
申請は窓口がバラバラなのが厄介。保健所・消防署・警察署・税務署、と相手が違います。

飲食店営業許可は営業開始前に保健所で取得する必要があり、申請先や必要書類、審査期間は自治体ごとに異なります。
| 窓口 | 主な手続き | 対象 |
|---|---|---|
| 保健所 | 飲食店営業許可/菓子製造業許可 | 全店舗・製造販売する店 |
| 消防署 | 防火対象物使用開始届 | 店舗を使い始める店 |
| 警察署 | 深夜酒類提供飲食店営業の届出 | 深夜に主に酒を出す店 |
| 税務署 | 開業届/法人設立届 | 個人事業・法人 |
保健所:飲食店営業許可・菓子製造業許可
飲食店なら必ず通る関門。自治体の案内では「開業前に余裕をもって申請」が基本で、少なくとも営業開始前に許可を得る必要があります。
施設の検査があるので、内装が完成してからでないと許可が下りません。工事スケジュールと連動させて、早めに事前相談へ行くのがいちばんの保険です。
消防署:防火対象物使用開始届
店舗を新たに使い始めるときは、消防署へ防火対象物使用開始届を出します。届出のタイミングや書式は管轄で異なる。
前述の防火管理者の選任とあわせて、消防署には早い段階で一度相談に行ってほしい。消火器や避難経路の指摘が後から来ると、工事が手戻りします。
警察署:深夜酒類提供飲食店営業の届出
深夜0時を過ぎて主に酒類を提供する店は、警察署へ届出が必要です。バーや深夜営業の居酒屋が対象。
届出には店内の図面などが要り、準備に手間がかかります。深夜営業を考えているなら、内装設計の段階で要件を確認しておくと無駄がありません。
税務署:個人事業の開業届と法人設立届の違い
個人で始めるなら税務署へ開業届。法人を作って始めるなら法人設立届を出します。
開業届は提出のハードルが低く、青色申告とセットで出すと節税面で有利です。法人は設立手続きそのものが別に必要なので、最初は個人で始める人が多い印象です。
HACCPに沿った衛生管理と開業後の継続的義務
資格を取って許可を得たら終わり、ではありません。開業後も続く義務があります。

代表が2021年に完全義務化されたHACCPに沿った衛生管理。小規模な飲食店も対象です。
2021年義務化されたHACCPへの対応
HACCP(ハサップ)は、調理の工程ごとに衛生上の危険を管理して記録する仕組みです。難しく聞こえますが、小規模店は「手引書に沿って簡略な管理を行う」形でよいとされています。
具体的には冷蔵庫の温度や加熱の確認を日々記録する、といった内容。日々の点検表を1枚作るところから始めると続きます。
食品表示・アレルギー表示の義務
パッケージして販売する食品には、原材料やアレルギーの表示義務があります。テイクアウトや菓子販売をする店は特に注意。
店内提供のメニューでも、アレルギー情報を聞かれたら答えられる体制は必要。トラブルを避けるためにも、原材料は最初から整理しておくのが得策です。
資格の更新・有効期限はあるか
食品衛生責任者の資格自体に、一律の更新期限はありません。ただし自治体によっては定期的な実務講習の受講を案内しています。
防火管理者も資格そのものは継続しますが、店側の防火管理業務は続きます。「取って終わり」ではない点だけ覚えておいてください。
見落としやすい注意点と取得しなかった場合のリスク

最後に、開業相談で実際によくつまずくポイントを正直にまとめます。
特に居抜き物件と深夜営業、そして無許可営業のリスク。ここを知らないと開業が止まります。
居抜き物件・テナント契約時に確認すべき許可
「前の店が飲食店だったから許可も引き継げる」と思いがちですが、飲食店営業許可は施設と営業者に紐づくため、原則として取り直しが必要です。
取材したオーナーで、居抜きを安く借りられたのに許可関連の確認を後回しにして、開業が1ヶ月遅れた人がいました。契約前に保健所へ図面を持って相談するのが鉄則です。
深夜酒類提供の届出が不要なケース
深夜0時を超えても、提供の主体が食事で酒が従なら、深夜酒類提供飲食店営業の届出が不要なケースがあります。たとえば深夜営業のラーメン店のような形態。
線引きが微妙なので、自店が「主に酒か」「主に食事か」を警察署に確認してください。自己判断で省くのは危険です。
資格・許可がない場合の罰則とリスク
飲食店営業許可を取らずに営業すると、食品衛生法違反として営業停止や罰則の対象になります。
食品衛生責任者の未設置や深夜届出の未提出も指導・処分の対象。せっかくの開業が一発で止まるので、ここはケチらず確実に押さえてください。
飲食店開業の資格に関するよくある質問
取材や相談で繰り返し聞かれる質問を、費用・手続き・始め方の3点でまとめます。

よくある質問
私からの率直なアドバイス。今日できる一歩は、住む自治体の食品衛生協会のサイトを開いて、次の講習日程を見ることです。日程を1つ押さえるだけで、開業はぐっと現実に近づきます。
