飲食店の事業計画書の書き方|記入例と融資に通る作り方を解説

- 事業計画書の核は「必要な資金」と「調達方法」の合計を一致させること。
- 売上は希望値ではなく、客単価・席数・回転率・営業日数で積み上げる。
- 原価率と人件費を足したFLコストの管理が飲食店の収益性を左右する。
- 融資の日本政策金融公庫と補助金の小規模事業者持続化補助金では強調点が変わる。
- 損益分岐点と撤退基準を先に決めておくと、開業後の資金繰り失敗を防げる。
飲食店の事業計画書とは?必要なケースと作成のタイミング

飲食店の事業計画書とは、誰に何をいくらで売り、いくら稼ぐかを数字と根拠で説明する書類です。
日本政策金融公庫の「創業計画書」には、創業の動機・経営者の略歴・取扱商品・取引先・従業員・借入の状況・必要な資金と調達方法といった記入項目があります。これが創業時の資金調達で使う代表的な構成です。
事業計画書が必要になる場面
最も多いのは融資の申し込みです。公庫の創業融資を受けるなら、創業計画書の提出はほぼ必須になります。
もう一つが補助金の申請。小規模事業者持続化補助金では、経営計画書と補助事業計画書の作成が求められます。融資と補助金では、同じ計画でも強調する部分が変わるのがポイントです。
作成を始めるベストなタイミング
物件を本契約する前です。正直、ここを逆にして失敗する人を何人も見ました。
物件が決まってから計画を作ると、家賃や坪数に数字を無理やり合わせることになります。先に「いくらなら回るか」を計算してから物件を探すほうが、ずっと精度が上がります。
所要時間と難易度の目安
初めてなら、雛形を埋めるだけで丸2〜3日。コンセプトや売上根拠まで詰めると1〜2週間は見ておくと安心です。
難易度は中くらい。一番つまずくのは売上予測の根拠づくりですが、後述の「客単価×席数×回転率」を使えば、計算自体は中学レベルの掛け算で足ります。
事業計画書の書き方【7項目を記入例つきで解説】
7項目は、公庫の創業計画書の様式に沿って「動機→経歴→商品→取引先→従業員→借入→資金計画」の順で埋めます。

ここでは特につまずきやすい4項目を、記入例つきで具体的に見ていきます。まずは雛形を手元に開いて、一緒に埋めていきましょう。
①創業の動機の書き方
「飲食が好きだから」では落ちます。動機は、経験と勝算をセットで書くのが鉄則です。
記入例:「居酒屋チェーンで5年間、調理と店長を経験。立地A駅周辺に手頃な価格の和食店がなく、近隣オフィスの昼需要を取れると判断し開業を決意」。経験・市場の空白・勝算の3点が入っていれば合格です。
②経営者の経歴の書き方
開業する業態と関係のある職歴を、年数と役割を明記して書きます。
調理経験だけでなく、売上管理や仕入れ交渉、シフト管理の経験があれば必ず書く。審査担当者は「この人は店を回せるか」を経歴から読みます。アルバイト時代の役職や数字も、関連すれば立派な実績です。
③取扱商品・サービスの書き方
看板メニューと価格帯、そして「なぜ選ばれるか」を1セットで書きます。
公庫の計画書でも、コンセプトと競合との差別化を明確にすることが重視されます。「ランチ1,000円・夜の客単価3,500円・名物は炭火焼の地鶏」のように、価格と目玉を具体的な数字で示すと伝わります。
④必要な資金と調達方法の書き方
ここが7項目の山場です。必要な資金の合計と、調達方法の合計を1円単位で一致させます。
公庫の様式は、左に「必要な資金」、右に「調達の方法」を対応させる設計になっています。設備資金(内装工事・厨房機器)と運転資金(仕入れ・人件費・家賃)を分けて書くのが基本です。
| 必要な資金 | 用途 | 調達の方法 |
|---|---|---|
| 設備資金 | 内装工事・厨房機器・看板 | 自己資金 |
| 運転資金 | 仕入れ・人件費・家賃3か月分 | 日本政策金融公庫からの借入 |
| 合計 | 必要資金の総額 | 調達合計(必要資金と一致させる) |
設備資金には、見積書を必ず添付します。資金使途を見積書などの根拠資料とセットで示すのが、審査で確認されやすくするコツです。
コンセプトと立地・商圏を作り込む手順
コンセプトは「誰に・何を・どこで・いくらで売るか」の4つを一文で言い切れる状態がゴールです。

ここは競合記事が薄い部分。でも融資審査で「なぜこの店が選ばれるか」を支える土台なので、しっかり作り込みます。
誰に何をいくらで売るかを決める
ターゲットを「30〜40代・近隣オフィス勤務・週2回外食」のように、人物像が浮かぶ粒度まで絞ります。
ぼんやり「幅広い層に」と書くと、メニューも価格も中途半端になります。私の取材経験でも、繁盛している店ほどターゲットが尖っていました。
立地・商圏分析と物件の評価方法
物件は「家賃」だけでなく、前面通行量・最寄り駅からの距離・周辺の競合密度で評価します。
昼と夜、平日と休日で人通りを実際に数えるのが一番確実です。これを怠ると、図面上はよく見えた物件で開業後に苦しむことになります。
| 評価項目 | 見るポイント |
|---|---|
| 前面通行量 | 平日・休日、昼・夜で実測する |
| 駅からの距離 | 徒歩何分か、夜道の人通り |
| 競合密度 | 同業態が半径500m以内に何店あるか |
| 家賃比率 | 想定売上の10%前後に収まるか |
競合分析と差別化ポイントの整理
半径徒歩5分以内の競合を実際に食べ歩き、価格・客層・強みを表にして比較します。
差別化は「価格」「メニュー」「立地」「サービス」のどこで勝つかを1つに絞る。全部で勝とうとするとコストが膨らみ、収支が合わなくなります。
根拠ある売上・収支計画の立て方

飲食店の売上は「客単価×席数×回転率×営業日数」で積み上げると、金融機関に根拠を示しやすくなります。
これは公庫の創業計画書で求められる数値計画とも整合する考え方です。希望値ではなく、構成要素に分解した数字で語るのが審査突破の近道です。
客単価×席数×回転率で売上を積み上げる
例えば客単価3,000円・20席・1日1.5回転・月25日営業なら、月商は3,000×20×1.5×25=225万円です。
回転率は強気に置きがちなので、開業直後は控えめに見るのが安全。私は審査用の計画では、想定回転率の8割で一度試算し直すよう勧めています。
原価率・人件費率(FLコスト)の業態別目安
原価(Food)と人件費(Labor)を足したFLコストは、売上の6割前後に収めるのが一つの目安です。
飲食業では、売上だけでなくコスト構造を説明しないと収益性の説得力が弱くなります。原価率や人件費の管理は、収益性を語るうえで欠かせません。
| 業態 | 原価率の傾向 | 人件費の傾向 |
|---|---|---|
| 居酒屋 | ドリンク比率が高いと原価は抑えやすい | 調理・接客で人手が必要 |
| カフェ | フードの原価がかさみやすい | 少人数で回しやすい |
| ラーメン店 | 食材を絞れば原価管理しやすい | オペレーションがシンプル |
損益分岐点売上高の計算方法
損益分岐点売上高は「固定費 ÷(1 − 変動費率)」で求めます。
例えば固定費が月100万円、変動費率が40%なら、100万円÷(1−0.4)=約167万円。月商167万円を超えて初めて利益が出ます。この数字を先に出しておくと、無謀な計画かどうか一目で分かります。
資金繰り表・キャッシュフロー計画
利益が出ていても、現金が尽きれば店は止まります。月ごとの入金と出金を並べた資金繰り表を必ず作ります。
開業直後は売上が伸びず、仕入れと家賃が先に出ていく月が続きます。運転資金は最低3か月分、できれば6か月分を手元に残す前提で計画してください。
開業に必要な資金・資格・手続きとスケジュール
開業には「設備資金+運転資金」の総額を把握し、自己資金と借入・補助金を組み合わせて調達するのが基本です。

資格と届け出は期限があるものが多く、スケジュールから逆算して動かないと開店日がずれます。
開業資金の総額と調達方法
内装・厨房機器などの設備資金と、当面の運転資金を分けて積算します。
調達は自己資金がベース。公庫の創業融資では、自己資金の額や使い道の説明が評価につながります。見積書を用途別に分けて添付すると、資金計画の信頼度が上がります。
補助金・助成金など融資以外の手段
代表例が小規模事業者持続化補助金で、販路開拓の取り組みを支援する国の制度です。
補助率や上限額は公募回や枠で異なるため、固定の数字で覚えず、申請前に最新の公募要領で必ず確認してください。自治体や年度ごとに募集期間が決まっており、通年申請ではない制度もあります。
必要な資格と届け出・許可の手続き
飲食店営業許可と食品衛生責任者は、ほぼすべての飲食店で必須です。
食品衛生責任者は講習を受ければ取得でき、営業許可は保健所への申請と店舗検査が必要です。深夜にお酒を提供するなら警察への届け出も加わります。検査日から逆算して工事日程を組むのがコツです。
| 手続き | 届け出先 | タイミングの目安 |
|---|---|---|
| 食品衛生責任者 | 講習を実施する団体 | 開業前に取得 |
| 飲食店営業許可 | 保健所 | 店舗完成前に事前相談→検査 |
| 深夜酒類提供の届出 | 警察署 | 深夜営業する場合、営業開始前 |
融資審査に通る事業計画書のポイントと面談対策
審査に通る計画書は「数字に根拠があり、必要資金と調達が一致し、経営者が口頭でも説明できる」状態です。

書類が立派でも、面談で答えられなければ評価は下がります。書いた数字は全部、自分の言葉で説明できるようにしておきましょう。
審査担当者が見る評価項目
経験・自己資金・計画の整合性・返済の現実性の4点が中心です。
特に重視されるのが計画の整合性。動機・売上・資金計画がバラバラだと、それだけで信用を落とします。
数値の根拠資料・市場データの示し方
売上は客数・客単価・稼働率・営業日数に基づく数値で示し、資金は見積書で裏づけます。
「希望でこのくらい」ではなく「平日◯人・休日◯人で計算」と書く。商圏の通行量や近隣相場など、自分で集めたデータを添えると説得力が増します。
面談で聞かれる質問と答え方
「なぜこの立地か」「赤字が続いたらどうするか」は高確率で聞かれます。
撤退基準や代替案を即答できると、リスク管理ができる経営者だと評価されます。逆に「なんとかします」では不安を残すだけ。数字で答える準備をしておきましょう。
失敗しやすい事業計画書のNG例と見直しのコツ

最も多いNGは「売上が希望値」「必要資金と調達のズレ」「撤退基準なし」の3つです。
どれも提出前のチェックで防げます。ここを潰すだけで、計画書の完成度はぐっと上がります。
よくあるNG例とその改善方法
| NG例 | なぜダメか | 改善方法 |
|---|---|---|
| 売上が右肩上がりの希望値 | 根拠がなく審査で疑われる | 客単価×席数×回転率で積み上げる |
| 必要資金と調達がズレている | 計画の整合性を欠く | 合計を1円単位で一致させる |
| コストが原価だけ | 人件費・家賃が抜けて利益が読めない | FLコストと固定費を全部入れる |
| 撤退ラインがない | リスク管理不足と見られる | 損益分岐点と撤退基準を明記する |
リスク分析と撤退基準の設定
「◯か月連続で月商◯万円を下回ったら見直す」と、数字で撤退ラインを決めておきます。
撤退基準を先に決めるのは縁起が悪いと嫌う人もいます。でも、これがあると感情に流されず冷静に判断できる。私は必ず設定するよう勧めています。
ブラッシュアップのタイミング
物件が決まったとき、見積もりが出たとき、面談前の3回は必ず見直します。
特に見積もりが出ると、想定より工事費が膨らむことが多い。数字が動いたら、必要資金と調達の合計を毎回そろえ直してください。
よくある質問(FAQ)
飲食店の事業計画書でよく検索される疑問に、まとめて答えます。

よくある質問
まずは雛形を開いて、コンセプトの一文と売上試算だけでも今日埋めてみてください。手が動き出せば、計画書は思ったより早く形になります。
