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開業飲食店の始め方完全ガイド|費用・資格・準備の流れを解説

中村 亮介 / 更新:2026-06-18
開業飲食店の始め方完全ガイド|費用・資格・準備の流れを解説
「飲食店を開きたいけど、何から手をつければいいのか分からない」——開業の相談で一番多いのがこの悩みです。結論から言うと、開業飲食店は『コンセプト→物件→資金→資格・届出→集客』の順で進めれば、初めての人でも形にできます。

私は飲食店運営会社で5年、店舗開発とFC加盟の担当をしてきました。独立した方への取材も30件を超えます。その経験から、つまずきやすい所と確実に押さえるべき手続きを、一次情報ベースで整理しました。

この記事で分かるのは、開業の全体スケジュール、費用と資金調達の中身、必要な資格・届出、そして開業後に赤字を出さないための数値管理まで。読み終えたら、明日やるべき一歩が見えるはずです。

開業飲食店とは?まず知っておきたい基本

【飲食店開業の手順】失敗しないための飲食店経営の準備と流れ
【飲食店開業の手順】失敗しないための飲食店経営の準備と流れ

開業飲食店とは、食事や飲み物を店内・テイクアウトで提供する事業を、自分で立ち上げて運営することを指します。レストランやカフェ、居酒屋、ラーメン店まで業態は幅広い。共通するのは、保健所の許可を取り、衛生と火災の責任者を置いて初めて営業できるという点です。

飲食店を開業するとはどういうことか

料理を出すだけが仕事ではありません。仕入れ、原価管理、人の採用、シフト、税務まで、店主が背負う範囲は思った以上に広い。

正直に言うと、料理が得意でも経営でつまずく人を何人も見てきました。開業は『作る人』から『回す人』への転換だと考えてください。

個人事業主で開くか法人化するかの判断基準

最初の一店舗なら、私は個人事業主からのスタートを勧めます。開業届を出すだけで始められ、手続きが軽いからです。

一方で、複数店舗を見据える、融資額が大きい、取引先が法人格を求める——こうした事情があるなら法人化を検討する価値があります。判断軸を表にまとめました。

個人事業主と法人化の比較
項目個人事業主法人
開業手続き開業届の提出で済む定款作成・登記が必要
設立コストほぼ不要登記費用などがかかる
所得が増えるほど税率が上がる一定以上の利益で有利になりやすい
信用・取引個人名義対外的な信用を得やすい
向くケースまず一店舗で小さく始める多店舗・大型融資を見据える

小さな飲食店なら1人でも開業できるのか

できます。カウンター中心の小箱なら、仕込みから接客まで一人で回している店は珍しくありません。

ただし一人営業は、体調を崩した日が即休業日になる。回転と単価の設計を甘くすると体力だけ削られます。ワンオペ前提なら、席数を絞り客単価を上げる設計が現実的です。

開業飲食店の始め方と全体スケジュール

開業には進めやすい順番があります。逆算でだいたい1年前から動くと無理がありません。下の一覧を最初のチェックリストとして使ってください。

開業飲食店の始め方と全体スケジュール
開業までの逆算スケジュール
時期やること
〜1年前コンセプトを固める
1年〜6か月前事業計画書を作る
6〜3か月前物件を探す
3〜2か月前資金調達・施工・備品の手配
3か月前〜メニューとレシピを確定
1か月前〜資格取得・各種届出
2か月前〜開店スタッフ採用・教育

コンセプト設計を5W1Hで固める

コンセプトを甘く見ると、物件もメニューもブレます。ここが全ての土台です。

私はいつも5W1Hで詰めてもらいます。誰に(Who)、何を(What)、どこで(Where)、いつ(When)、なぜ(Why)、どう提供するか(How)。これが一行で言えるかが分かれ目です。

例えば『オフィス街の30代会社員に、15分で食べ終わる本格スパイスカレーを、平日昼に、価格を抑えて、提供する』。ここまで具体なら物件選びも自然に絞れます。

事業計画書の作り方と融資審査のポイント

事業計画書は融資の合否を左右します。日本政策金融公庫の新規開業資金を使うなら、ここは手を抜けません。

審査で見られるのは、自己資金の割合、売上根拠、返済計画の現実味です。『なんとなく繁盛する』では通りません。席数×客単価×回転×営業日数で、月商の根拠を数字で示すこと。

物件選び(居抜きとスケルトンの比較)

物件探しは資金調達より先に動きます。良い物件は待ってくれないからです。内見には施工業者に同行してもらうと、後の工事費を読み違えにくい。

居抜きとスケルトン、どちらが正解かはコンセプト次第です。比重で言えば、初開業なら私は居抜き寄りを勧めます。初期費用を抑えられる効果が大きいからです。

居抜き物件とスケルトン物件の比較
項目居抜きスケルトン
初期費用抑えやすい高くなりやすい
内装の自由度低い(前の設備に縛られる)高い(一から作れる)
開業までの期間短くしやすい長くなりがち
設備の状態劣化リスクあり要点検新規で安心しやすい
向くケース費用と時間を抑えたい世界観を作り込みたい

メニュー開発と仕入れ先の選定

メニューは原価率を意識して設計します。看板商品で集客し、利益率の高い一品で稼ぐ構成が基本です。

仕入れ先は最初から一社に絞らないこと。同じ食材で複数社に見積もりを取り、品質と価格を比べます。発注ロットや支払いサイトの交渉余地も必ず確認してください。

開業飲食店の費用と資金調達のすべて

費用の不安が一番大きいところだと思います。物件取得費、内装工事、厨房設備、備品、運転資金——これらを足し合わせると、小規模店でもまとまった金額になります。

開業飲食店の費用と資金調達のすべて

資金は『融資』と『補助金・助成金』を組み合わせて準備します。ただし補助金は原則後払い。開店直前の支払いには間に合いません。ここを誤解すると資金繰りが詰まります。

開業資金の目安と備品・設備の費用相場

開業資金は内装・厨房・物件・運転資金で構成されます。注意したいのは運転資金です。

開店後すぐに黒字になる店は少ない。最低でも数か月、家賃と人件費を払い続けられる手元資金を残しておくこと。設備費に全額を回すと、立ち上がりの赤字で資金が尽きます。

日本政策金融公庫など融資の進め方

創業期の融資先として、まず検討するのが日本政策金融公庫の新規開業資金です。前述のとおり返済は必要ですが、初期の大きな資金を確保できます。

審査を通すコツは、自己資金をきちんと積むことと、計画書の数字に矛盾を作らないこと。面談では『なぜこの立地か』を自分の言葉で語れるようにしておきます。

補助金・助成金の種類と申請方法

補助金・助成金は年度や公募回で条件が変わります。必ず最新の公募要領を確認してください。代表的な制度を整理しました。

飲食店で確認したい主な補助金・助成金
制度名対象・特徴補助率/限度額
東京都 創業助成事業都内で創業予定または創業5年未満。賃借料・広告費・人件費等が対象助成率2/3以内・限度額300万円
小規模事業者持続化補助金小規模事業者(飲食業は従業員5人以下が基準)。販路開拓等上限は公募回ごとに変動
ものづくり補助金設備投資・生産性向上の取り組み公募要領で都度確認
中小企業省力化投資補助金省力化・人手不足対策の設備導入公募要領で都度確認
中小企業新事業進出促進補助金新業態への進出・新事業展開公募要領で都度確認

このほか、所在地の自治体に独自の創業支援制度があるケースも多い。店舗改装費や賃借料を対象にする例もあります。対象地域・募集期間・上限額は自治体ごとに違うので、必ず公式サイトで確認を。

原価率とFLコストで利益を出す数値設計

利益が残るかどうかは、FLコストの管理で決まります。FLとは食材費(Food)と人件費(Labor)の合計のこと。

FLコストが売上に占める割合を低く抑えるほど、家賃や水光熱費を払った後の利益が残りやすくなります。原価率と人件費率は毎月計算して、目標値からのズレを早めに直す。これを習慣にできる店は強いです。

開業に必要な資格・届出・申請

【飲食店】開業する為に準備すべき8つのこと
【飲食店】開業する為に準備すべき8つのこと

飲食店の開業には、必要な資格が2つと、出すべき届出があります。ここを見落とすと営業を始められません。順番に押さえます。

食品衛生責任者と防火管理者

必須の資格は食品衛生責任者です。各店舗に1名は置く必要があります。講習を受ければ取得でき、調理師や栄養士などの資格保持者は講習が免除される場合があります。

もう一つが防火管理者です。これは店の収容人数や規模によって選任が必要になります。小規模店なら不要なこともあるので、消防署で確認してください。

飲食店営業許可の取り方と届出の時期

営業には保健所の飲食店営業許可が必要です。施設の設備が基準を満たしているか、現地検査を受けて初めて許可が下ります。

ポイントは申請のタイミング。工事の途中で保健所に図面を相談しておくと、完成後にやり直しになるリスクを減らせます。許可が下りるまで日数がかかるので、開店日から逆算して早めに動くこと。

社会保険・労働保険など開業後の手続き

スタッフを雇うなら、労働保険の手続きが発生します。法人や一定条件では社会保険への加入も必要です。

一人や家族だけの個人事業なら、すぐに社会保険加入が必須になるわけではありません。雇用状況で変わるので、採用が決まったタイミングで確認するのが確実です。

開業後に売上を伸ばす集客とリピーター施策

開業はゴールではなくスタートです。正直、ここを軽視して苦労する店が一番多い。良い料理を出していても、知ってもらえなければ客は来ません。

開業後に売上を伸ばす集客とリピーター施策

SNS活用と地域への認知拡大

開店前からSNSを動かすこと。内装が形になっていく様子や試作の写真は、開店初日の客足に直結します。

地域への認知も侮れません。近隣へのチラシ、Googleマップの店舗情報整備、地元の口コミ。地味ですが、住宅街の店ほどこの足元の積み重ねが効きます。

ターゲット立地別の戦略の違い

立地によって勝ち方が変わります。同じ施策をどこでもやるのは非効率です。

立地別の集客の考え方
立地特徴効く施策
オフィス街平日昼に集中・週末は弱いランチ回転重視・テイクアウト
住宅街リピーターが命近隣チラシ・地域の口コミ・常連化
駅前通行量が多く一見客中心看板・SNS・入りやすい入口設計

テイクアウト・デリバリー・キャッシュレス対応

テイクアウトやデリバリーは、席数の制約を超えて売上を作れる手段です。昼の混雑時間に席が足りない店ほど効きます。

キャッシュレス決済も、今は導入が前提に近い。会計がスムーズになり、現金管理の手間も減ります。手数料はかかりますが、機会損失を防ぐ効果のほうが大きいと考えています。

収支シミュレーションと損益分岐点の計算方法

開業前に必ずやってほしいのが収支シミュレーションです。感覚ではなく数字で、いくら売れば赤字を脱するのかを把握しておく。

収支シミュレーションと損益分岐点の計算方法

毎月の固定費・変動費を洗い出す

まず費用を二つに分けます。固定費は売上に関係なくかかるもの——家賃、正社員の給与、リース料など。変動費は売上に連動するもの——主に食材費です。

この区分けが曖昧だと、損益分岐点が計算できません。最初に紙に書き出すだけで、月にいくら出ていくかが見えてきます。

損益分岐点売上の具体的な計算手順

損益分岐点売上は、固定費 ÷(1 − 変動費率)で求めます。変動費率とは、売上に対する変動費の割合のこと。

たとえば変動費率が0.3(原価率30%)なら、分母は0.7。月の固定費を0.7で割った金額が、赤字にならない最低ラインの月商です。この数字を超える日販目標に落とし込めば、毎日の指標になります。

開業後の税務・確定申告とインボイス制度

個人事業主なら毎年の確定申告が必要です。青色申告にしておくと控除の面で有利になります。

取引先に請求書を出す業態なら、インボイス制度への対応も検討事項。登録するかどうかは取引相手との関係で変わるので、税理士に一度相談しておくと安心です。

失敗・廃業の理由から学ぶリスク回避策

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取材を重ねて分かったのは、廃業の原因がだいたい数パターンに集約されることです。先に知っておけば避けられます。

よくある廃業理由のパターン

多いのは、運転資金不足、立地とコンセプトのミスマッチ、原価と人件費の管理不足。この三つです。

特に立ち上がりの赤字を読み違えるケースが目立ちます。『開ければ客が来る』という前提で資金を組むと、数か月で息切れする。逆に言えば、ここを保守的に見積もった店は生き残っています。

資金繰りと数値管理でつまずかないコツ

毎月、FLコストと損益分岐点を見直すこと。数字を見る習慣がある店は、悪化に早く気づいて手を打てます。

そして手元資金を厚めに持つ。私が独立希望者に毎回伝えるのは『設備に全部使い切るな』です。攻めの前に、守りの資金を残してください。

開業飲食店についてよくある質問

相談でよく出る質問を、要点だけ短くまとめました。

開業飲食店についてよくある質問

よくある質問

最初に取りかかるべき準備は?
コンセプト設計です。誰に何をどこで提供するかを5W1Hで一行に言えるまで固めると、物件・メニュー・資金の判断がブレなくなります。理想は開業の約1年前から着手することです。
必要な許可や届出には何がある?
必須の資格は食品衛生責任者で、各店舗に1名置きます。規模により防火管理者の選任が必要です。営業には保健所の飲食店営業許可が要り、現地検査を経て許可が下ります。
届出のベストな時期はいつ?
営業許可は工事の途中で保健所に図面を相談し、完成後に検査を受ける流れが安全です。許可まで日数がかかるため、開店日から逆算して1か月前を目安に早めに動きます。
コンセプト設計が重要な理由は?
コンセプトが全ての判断基準になるからです。ここが曖昧だと物件もメニューもブレ、立地とのミスマッチが起きます。廃業理由の上位にこのズレが入っているほど、土台として重要です。

最後にひとつ。開業は完璧な準備が整う日を待つより、コンセプトを一行に書くところから始まります。今日その一行を書いてみてください。そこから全部つながります。

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中村 亮介

飲食店運営会社での勤務経験5年(店舗開発・FC加盟担当) ・ 独立開業者への取材実績30件以上
飲食業界歴10年

飲食業界での勤務経験と複数の開業サポート取材をもとに、費用・手続き・物件探しまで一次情報に徹して書く編集者。「いつか開業」を「今日の一歩」に変えるための実務的な記事を心がけている。

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